近代歯学の父:一井 正典
ポートランドにゆかりのある人物に一井正典(いちのい・まさつね)という方がいます。
もう120年も昔の話になってしまうのですが、日本の近代歯学の先駆者で明治、大正、昭和と天皇家三代にわたって歯科医を務めた程の人で、その時代の常であった、はかりしれない苦労や苦学を乗り越えた留学生の大先輩と言える人物です。
この一井氏が歯科医院を開業していた由緒あるビル(ディーカム・ビルディングDekum Building)が当地オレゴン州ポートランドに今も残っています。このビルが新築完成した直後の入居者としてこの一井氏が医院を構え、当時のポートランドの有力者たちに技術の教授や治療を行っていたのでしょう。
このビルの横を通るたびに、この一井氏という大先輩に尊敬と憂愁の念に駆られないではいられません。
この一井氏についての詳しい人物伝は私が下手な文章でつづるよりも、下記の熊本県のホームページにすばらしい人物伝が掲載されているので、そちらをぜひとも参照してください。
上記の記事を読んでもらえれば一目ですが、この一井氏の人物像が自分自身も留学体験者として、また数多くの日本人留学生との出会いの中で、目にとるようにわかるのが下記の一遍です。
卒業にあたり正典は、学校に納入すべき金がない。ほとんど落第を覚悟したとき、八十一人のアメリカ人のクラスメートが、おのおの1ドルずつ出しあって正典を助けてくれた。
苦学生である一井氏にクラスのみんながお金を出し合って助けてくれるのは、真にアメリカ人のクラスメイトからも人望と尊敬を得ていたことの証明でしょう。黄色・有色人種に対する迫害や差別が世間の常識であった時代のことです。
私は在日韓国人という複雑な環境の中で日本で生まれ育ちました、第2次世界大戦後に世界の常識の中でも秀でた模範社会を築いた日本というい国には、このすばらしい達成を日本社会の一員として、愛国心ともいえる、喜び、誇りを感じています。奇妙なことと思う人もいるかもしれませんが、日本で生まれ育った日本社会の一員として一井氏のような立派な日本人がアメリカから日本の発展に役立つ知識を吸収しながら、アメリカ人から尊敬の念を得て日本に帰っていた事がまるで自分の事のように親近感と喜びを感じるのです。
しかし、 このような先人の達成に対して、日本からの留学生が10万人(短期、長期含む)にも及ぶと言われる現在の我々の世代は先人の努力と達成に準じるような「頑張り」が出来る日本人が少なくなり、大変不安も感じる今日この頃なのです。。。
参考サイト:
「くまもとの偉人」熊本県近代化功労者 一井 正典 歯科医学者
http://www.higo.ed.jp/kyouikuiinkai/kiji2/pub/default.phtml?p_id=1582
TrackBack URL :
Comments (0)